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アルセーヌ新版

この記事はTrick-taking games Advent Calendar 2017の12月2日の記事として書かれました。

およそ1年がかりの審査の結果、ついにTrick Taking Party賞(TTP賞)受賞作が公開されました。大賞は「アノウ」というトランプゲーム。私も遊んでみましたが、1ディール通して実に悩ましい選択の連続で、短い時間の中でも濃密なプレイを楽しめる良作でした。大賞受賞も納得の逸品です。粒揃いの候補作品の中、審査員の皆様は大賞を決定するまでさぞ大変なご苦労があったかと思います。この大賞作品が世界に羽ばたき、言語の壁を越えて多くの人にプレイされることを願ってやみません。

さて私の作品「アルセーヌ」ですが、残念ながら一次審査で落選になってしまいました。。とはいえ、審査期間中はこのお祭り騒ぎに参加して積極的に楽しむことができたので、個人的には非常に満足しています。Twitterを通して、何人かの方にプレイの感想をいただくこともできました。これはTTP賞に応募したからこそ実現したわけで、自ブログ公開だけではとてもこうはいかなかったでしょう。さらに、ごく一部の方には高い評価をいただくこともでき、有難さに恐縮しきりです(余談ですが、SDJ予想師として名高いシミーズさんは早くからアルセーヌを評価してくださり、どこの誰とも分からぬ無名作家の作品を率先して採り上げたのは批評家として凄いなぁと思いました)。落選はしたものの、ゲームの出来について充分な手応えを感じることができたのは大きな収穫だったと思っています。

その一方で、プレイ上の問題点もいくつか指摘を受けました。多くはプレイアビリティに関連するものでしたが大変示唆に富むものばかりで、これらを参考に改良すればもっと品質の高いゲームに昇華できるような気がしてきました。そこで、個人的に思い入れもあるこの創作ゲームについて「ではいっぺんデベロップめいたことをやってみようか」と思い至りました。といってもシロウトのやることなので、まるっきり見当違いの改悪になっているかもしれません。その場合はまたご指摘いただければと思います。

そもそもアルセーヌは好き嫌いのはっきり分かれるゲームではないか?と感じています。それは、トリックテイキングとバッティングシステムの組み合わせの是非に由来していると考えています。獲得トリック数のバッティングにより双方が不利益となることをただただ理不尽と感じるプレイヤーが一定数おり、これが全体的な評価を下げる一因になってしまったのではないでしょうか?トリック押しつけルールがその傾向に拍車をかけています。しかし一方で、バッティングシステムはドラマチックな展開を生み出す基幹エンジンとして有効に機能します。アルセーヌでは、宝石店のチップが最初は1チップずつで等価なので他人とのバッティングさえしなければ良い、というわけで序盤は割と協力的な関係でゲームが進みます。しかし3トリック目にあたる宝石店を中心にして徐々にチップの数が重み付けられていきます。これにより、他人を出し抜こうとして3トリック獲得を目指そうとしますが、皆同じことを考えるので結局バッティングする、といった仕掛けになっています。実際、何人かの方にコメントいただいたのですが、「ゲームの終盤に向けて盛り上がっていくデザインがとても良かった」とのことでした。これは私がデザイン上気をつけた重要なポイントであって、まさに「我が意を得たり」という思いです。このドラマ性こそがアルセーヌのキモであるため、バッティングシステム自体はそのままに、理不尽さをある程度抑えられるようルール改定できればと思いました。

私が旧版ルールで良くないと感じたのは、毎ディールバッティングを繰り返し、ほとんどチップを取れないままドボンとなってゲームが終了する可能性があることです。初プレイでそのような目にあったプレイヤーはたまったものではありません。そのプレイヤーはまず間違いなく、このゲームをつまらなかったと評するでしょう。ゲームというのは勝ち負けに関係なく、参加したプレイヤー全員が「面白かった」と思えるものでなくてはなりません。そうでないと、わざわざ皆が一つの場に集まって遊ぶ甲斐がないではありませんか!そこで、多少切れ味が鈍くなるの覚悟で、バッティングしたプレイヤーにもある程度の救済措置を施すことにしました。それが「見のがしトークン」の導入です。これを2つ得ることで、ゲーム中一度だけ、ドボンを回避できるようになります。1つだけではその効果はありませんが、あと1つ取れば他人より優位に進めることもできる、という小目標ができるので理不尽感は大分薄まることになります。ドボン回避は一見強すぎる効果のようですが、それまで2回もバッティングしているということは、そのプレイヤーの獲得チップ数は現状ほぼゼロということです。そのため、最後まで逆転の目を残すという意味ではちょうど良い按配なのではないでしょうか?

また、これも多くのご指摘を受けたのですが、「切り札表示が通常と逆で分かりづらい」という問題がありました。これは旧版でも結構ギリギリまで悩んだところで、ゲームバランス等を考慮して結局あのかたちになったわけですが、改めて色んな方から指摘されると「まぁそうだよな」と思うようになってきました。しかし、めくった札がダイヤの時だけ切り札ありというのは、やはり採りたくないのです。というのも、ダイヤの札は数が少ないので、これだと切り札ありの確率が極端に低くなってしまいます。私は、「大体の場合切り札ありで、たまにノートランプ」くらいがちょうど良いと思っています。切り札ありの方が明らかにコントローラブルにプレイできて気分が良いからです。そして、たまに訪れるノートランプのディールがゲーム展開に変化を与え、ちょっとしたスパイスになることでしょう。そこで新ルールでは、ディーラーの左隣のプレイヤーが場の伏せ札のうち1枚を手札に加え、手札の中に「絵札以外のダイヤ札」が1枚でもあればそれを出して(←マストフォローということです)切り札表示カードとすることにしました。もし1枚も無ければ、手札から好きなカードをピックアップして皆に見せた後、裏向きにして場の伏せ札の隣に並べます。この場合はノートランプです。これによって、切り札表示カードが通常と同じ表示形態になり、かつ、切り札ありとなる確率をほぼ望ましいものにできました。

さらに、今回新たに3人用特別ルールを追加しました。プレイ人数に幅を持たせるのは、テストプレイが面倒なので最近ではあまりやらなくなっていました。それに、「やはりベストなプレイ人数でやってもらいたい!」という思いも強くあったので。。しかし実際今回のような公募の場となると、プレイしてもらえるチャンスも一気に増えるわけです。それに対し、プレイ人数を限定してしまうのはそういう機会を逆に狭めることになるんですね。これは明らかに損しているなと感じました。そこで3人用ルールの追加になるのですが、実際取り組むと4人用とはバッティング頻度が大きく変わったりして簡単な変更では上手く行きませんでした。考えた末、結局ダミープレイヤー導入によりその問題を解決できました(ベガスの中立ダイスヴァリアントをお手本にした、と言えばピンとくるでしょうか)。3人用は4人用ともまた少し違ったプレイ感で、個人的にも大変気に入っています。

皆様の感想あっての創作ゲームです。そして、皆様のご指摘は積極的に受け止めて自分の中で消化し、改良に活かしていきたいと思っています。そのため、今後も忌憚無く批評コメントを挙げていただければと思います。ヘコまない程度にね(*^_^*)

それでは、以下でルール詳細を説明します。

【タイトル】
アルセーヌ新版
※以下、旧版と異なる部分を赤字にしてあります。

【プレイ人数】
3〜4人

【プレイ時間】
約30分

【ストーリー】
プレイヤーは名だたる宝石店を狙う泥棒となり、ライバルと盗みの腕を競い合います。誰か一人がポリスに捕まるまでに最も多くの宝石を獲得したプレイヤーが、伝説の怪盗“アルセーヌ・L"の名を継承できるのです。

【ゲームの概要】
シンプルなノンビッド系のトリックテイキングゲームです。宝石店を模した5枚のダイヤ札の上にあるチップを取り合います。1ディールで獲得したトリック数に対応する宝石店からチップを盗むことができます。ただし、同じ宝石店に複数人が一度に盗みに入った場合はお見合いとなり、どのプレイヤーもチップを獲得できません。また、チップが枯れてしまった宝石店にはチップの代わりにポリスが待ち受けています。そこに盗みに入ったプレイヤーはたちまち捕まり、所持チップを全て没収された上、ゲームは終了してしまいます。

【使用するコンポーネント】
•トランプ1組(ジョーカーは使用しません)
•小さめのチップ27枚(1円硬貨などで代用も可能です)
•コマ8個(キューブやミープル、あるいはマッチ棒など、上記チップと区別がつくものなら何でも構いません)

【カードの強さ】
•ランクの強さは以下のようになります。

A > K > Q > J > 10 > 9 > 8 > 7 > 6 > 5 > 4 > 3 > 2

【ゲームの準備】
•ジョーカーを抜いた52枚の札を用意します。
•ダイヤのA, ダイヤの2, ダイヤの3, ダイヤの4, ダイヤの5を抜き出し、場の中央に表向きに昇順に並べます(以後はこれらを「宝石店カード」と呼びます)。そして、それらの札の上に以下のようにチップ27枚を配置します。

◇A, 5の宝石店カード→ 各札の上に3チップずつ(1チップ、1チップ、1チップの3グループに分け、1枚の札の上に全グループを乗せる)
◇2, 4の宝石店カード→ 各札の上に6チップずつ(1チップ、2チップ、3チップの3グループに分け、複数チップのグループは積み上げ、1枚の札の上に全グループを乗せる)
◇3の宝石店カード → 札の上に9チップ(1チップ、3チップ、5チップの3グループに分け、複数チップのグループは積み上げ、1枚の札の上に全グループを乗せる)

•コマ8個を場の中央の空いているスペースにまとめて置きます(以後はこれらのコマを「見のがしトークン」と呼びます)。
•適当な方法で最初のディーラーを決めます。

【遊び方】
•ディーラーは宝石店カード以外の47枚の札をよくシャッフルして各プレイヤーに11枚ずつ配ります。残りの3枚の札は裏向きにして場の端に並べます。
•ディーラーの左隣のプレイヤーは場の端に並んだ3枚の札のうち任意の1枚を選択して取り、自分の手札に加えます。そして、手札の中に絵札以外でダイヤの札が1枚以上あれば、その中の1枚を選択して場の端の残り2枚の札の隣に表向きで並べなくてはなりません。この場合、今回のディールは「切り札あり(ダイヤ固定)」になります。一方、手札の中にダイヤが1枚もない場合は、任意の1枚を選択してその札の表面を他プレイヤー全員に見せた後、場の端の残り2枚の札の隣に裏向きで並べます。この場合、今回のディールは「切り札なし」になります。
※ゲーム中、場の端の3枚の札のうち1枚が表向きでダイヤの札が見えていれば“切り札あり”、3枚とも裏向きであれば“切り札なし”、と目視でチェックできるようになります。


•ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。
•以下に示すような、トリックテイキングのルールに従ってプレイします(下記手順4を除き、基本的なマストフォローのルールでゲームが進行します)。

1. 可能ならば、リードされたスートの札を出します。

2. リードされたスートが手札に無ければ、どの札を出しても構いません。

3. リードされたスートのうち、最も強い札を出したプレイヤーがそのトリックに勝ちます。ただし、切り札が出されている場合には、最も強い切り札が勝ちます。

4. 勝ったプレイヤーは、自分でそのトリックを取るか、他人にそのトリックを押しつけるかを選択することができます。ただし、押しつけることができるのは、その時点で自分と同じ数のトリック(0トリックを除く)を獲得している他プレイヤーだけです。該当する他プレイヤーが複数人いる場合は、自分から見て時計回りで順番がより近いプレイヤーのみが対象となります(それ以外のプレイヤーには押しつけることができません)。
例) 時計回りにAさん、Bさん、Cさん、Dさんの順で座っています。それまでの5回のトリックで、Aさんは1トリック、Bさんは2トリック、Cさんは1トリック、Dさんは1トリックを獲得しています。6トリック目でAさんが勝利しました。Aさんは自分でそのトリックを取ることもできますが、あえてCさんにトリックを押しつけることにしました(BさんやDさんに押しつけることはできません)。

5. トリックを獲得したプレイヤーが次のリードを行います。他人にトリックを押しつけた場合は、押しつけられたプレイヤーが次のリードを行います。

•後で獲得トリック数が分かるよう、取った札はその都度裏向きにまとめて一つにし、獲得したプレイヤーの前に並べて置きましょう。
•11回のトリックを取り合い、全員手札を出し切ったら1ディール終了です。

【チップの獲得】
•獲得トリック数と同じランク(Aは1と見なします)の宝石店カードの上にあるチップを以下のルールに基づき獲得します。ただし、同ランクの宝石店に複数のプレイヤーがバッティングした場合は、それら複数のプレイヤーは全員チップを獲得できない代わりに、場に置かれた「見のがしトークン」を1個ずつ獲得します。見のがしトークンをすでに2個持っているプレイヤーはそれ以上獲得できません。

◇A, 5の宝石店カード → 1チップ獲得。
◇2, 4の宝石店カード → 6チップ残っていれば1チップ獲得。5チップ残っていれば2チップ獲得。3チップ残っていれば3チップ獲得。
◇3の宝石店カード → 9チップ残っていれば1チップ獲得。8チップ残っていれば3チップ獲得。5チップ残っていれば5チップ獲得。
※獲得トリック数が0トリックか、または6トリック以上の場合はチップを獲得できません。

【ゲームの終了】
•次のディールはディーラーを左隣に移して行います。宝石店カード以外の47枚の札を全て集めてシャッフルし、配り直してください。
•ディールを繰り返していくと、宝石店カードの上のチップは徐々に無くなっていきます。
•そのうちに、1チップも残っていない宝石店が現れます。獲得トリック数がその宝石店のランクと同じになってしまった全てのプレイヤーは、プレイヤー同士のバッティング有り無しに依らず、各自で所持する見のがしトークンの数を確認してください。
見のがしトークンが1個だけか、全く持っていなければ、そのプレイヤーは所持チップを全て没収されてしまいます(複数のプレイヤーが一度に同じ宝石店でこの状態になった場合でも、それら複数のプレイヤー全員に没収ルールが適用されます)。
見のがしトークンを2個所持していれば、そのプレイヤーはそれらのトークンを場の中央に全て戻すことで、所持チップの没収を免除されます。それ以降、そのプレイヤーは見のがしトークンを獲得できません(没収の免除は一回きりということです)。

•1人以上のプレイヤーが所持チップ没収となったら、直ちにゲームは終了となります(他のプレイヤーはチップの獲得を済ませてください)。終了時に最も多くのチップを獲得したプレイヤーが勝利します。同数の場合は該当プレイヤー同士で勝利を分かち合います。
※特殊ケースとして、4人全員が一度に所持チップを没収された場合に限り、そのディールはノーカウントとし、次のディールを行います。
※特殊ケースその2として、全ての宝石店カード上からチップが無くなってもなお、誰も所持チップを没収されなかった場合はそこでゲーム終了とし、その時点で最も多くのチップを獲得したプレイヤーが勝利します。

【上級ルール】
•基本ルールをある程度遊んだら、以下の上級ルールも試してみてください。よりハードな戦いがあなた達を待っています。
•1箇所以上で1チップも残っていない宝石店が現れたら、その次のディール以降は「争奪モード」に突入します。争奪モードでは以下のようなルールが追加されます。
→同ランクの宝石店に複数のプレイヤーがバッティングした場合は、チップを獲得できないだけでなく、そのプレイヤー同士で所持チップの交換をしなくてはなりません(例えば、2チップ持っていたAさんと4チップ持っていたBさんがバッティングした場合、Aさんの所持チップは4枚になり、Bさんの所持チップは2枚になります)。0トリックでバッティングした場合も同様です。もし3人がバッティングしたならば、その3人の間でそれぞれ左側にいるプレイヤーにチップを渡します。また、ゲーム終了と同じ時点でバッティングが起きた場合も、該当プレイヤーはこの交換をしてから終了になります。
•争奪モード突入後は、バッティングしても見のがしトークンを獲得できません。

【3人用特別ルール】
3人でプレイする場合は、ダミープレイヤーがゲームに加わります。通常の4人用ルールとの差異は以下の通り(これら以外のルールは通常ルールを参照ください)。

•トランプ札52枚からダイヤの6、7の札とダイヤ以外の2、3、4の札(合計11枚)を全て除きます。これらはゲームに使用しません。
•中央の場の適当なスペースに「ダミープレイヤーの場」を設定します。ここはゲーム中、各プレイヤーがダミープレイヤーに押しつけたトリックの置かれる場所になります。

•ディーラーは宝石店カード以外の36枚の札をよくシャッフルして各プレイヤーに11枚ずつ配ります。残りの3枚の札は裏向きにして場の端に並べます。その後の切り札有り無しの決め方は通常の4人用ルールと同じです。

•各ディールの最初に、全てのプレイヤーは自分の手札の中から任意の1枚を取り出し、自分の前の場に裏向きに置きます。全員が置いたら、ディーラーはそれらを裏向きのまま1つにまとめてダミープレイヤーの場に置きます。これはダミープレイヤーが獲得したトリック1つ分を表します(ダミープレイヤーだけは常に1トリック取ったところからスタート、ということです)。

•トリックテイキングのルールは通常の4人用ルールと同じです。ただし、トリック押しつけはダミープレイヤーにも行うことができます(通常のルールと同様、ダミープレイヤーが
その時点で自分と同じ数のトリックを獲得している場合だけです)。なお、トリック押しつけできる条件に合致するプレイヤーがダミープレイヤー以外にもいる場合、常にダミープレイヤーのみが押しつけ対象となります。
•ダミープレイヤーにトリックを押しつけた場合、次のリードは押しつけたプレイヤーの左隣のプレイヤーが行います。

•ダミープレイヤーはチップの獲得を一切行いません。
•ダミープレイヤーとプレイヤーが同ランクの宝石店でバッティングした場合、そのプレイヤーはチップを獲得できない代わりに、場に置かれた「見のがしトークン」を1個獲得します。一方、ダミープレイヤーは見のがしトークンの獲得を行いません。
•ダミープレイヤーだけが1チップも残っていない宝石店に入ってもゲームは終了しません。
•(上級ルールの場合)争奪モード時の所持チップ交換は、ダミープレイヤーとプレイヤーの間では実施しません。

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